第1回 放射光科学賞  (2018年)


北村 英男氏 (KITAMURA Hideo)

NEOMAXエンジニアリング株式会社

放射光挿入光源開発による放射光科学への貢献

  北村英男氏は、アンジュレータ開発の世界的パイオニアである。世界初の放射光専用リングSOR-RINGにおいてアンジュレータの開発研究を行い、その成果に基づきPFに本格的軟X線アンジュレータを設置した。また、PF-ARにおいて世界初の真空封止アンジュレータの開発に成功し、SPring-8で標準X線アンジュレータとして採用された。これは世界的な注目を集め、BNLのNSLSで短周期真空封止アンジュレータのテストが行われ、2~3GeVクラスの蓄積リングでも、高調波により硬X線領域が利用可能であることが示された。このことが、現在の世界的な高輝度中型放射光施設建設ラッシュの礎となっている。真空封止アンジュレータはSPring-8で広く用いられている上に、コンパクトX線自由電子レーザー施設SACLAを開発する上でのキーコンポーネントとなった。短周期真空封止アンジュレータがあることで線形加速器のエネルギーを下げることが可能となり、小型化が可能となったためである。他にも北村氏はSPring-8において、偏光スイッチングアンジュレータ、クライオアンジュレータ、長尺アンジュレータなどの開発研究を成功させており、世界の放射光施設に大きな影響を与えた。
  以上のように北村英男氏は我が国の放射光科学の発展に著しい貢献をしており、本学会放射光科学賞に相応しい研究者と認められた。

日本放射光学会
会長 小杉信博

2018年 1月

受賞研究報告 学会誌 Vol.31 No.2(2018)