第16回 日本放射光学会奨励賞 (1/2)


岩澤英明 会員

広島大学放射光科学研究センター

真空紫外線域の放射光を用いた酸化物超伝導体の微細電子構造の研究

岩澤英明氏は、これまで、放射光を用いた真空紫外領域における角度分解光電子分光の精度を飛躍的に向上させ、酸化物超伝導体における微細な電子構造の変化を明らかにしてきた。特に、 銅酸化物高温超伝導体Bi2212 において、電子格子相互作用が強いために生じる巨大アイソトープ効果を見い出したとする著名な先行研究を見事に覆し、実際はアイソトープ効果が数meVのわずかなものであることを明らかにした。この結果は高温超伝導体の分野で大きな注目を浴びた。その他に、Sr2RuO4酸化物超伝導体などにおいても、精密な電子構造の研究を行い、電子相関、スピン軌道相互作用、電子-ボゾン相互作用などの効果を明らかにした。
 更に、岩澤英明氏は、広島大学HiSORの角度分解光電子分光ビームラインBL1の建設及びその共同利用実験において中心的な役割を果たした点も高く評価できる。
 以上のように、岩澤英明氏の業績は、先端計測分野を牽引していく若手研究者の1人として認められる。同氏の真空紫外領域の放射光科学の進展における功績は大きく、日本放射光学会奨励賞に十分値するものである。

日本放射光学会
会長 水木純一郎

2012年 1月

受賞研究報告 学会誌 vol.25 No.2(2012)