第16回 日本放射光学会奨励賞 (2/2)


豊田智史 会員

東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻
東京大学放射光連携研究機構

放射光光電子分光によるMOSFETゲートスタック構造の界面電子状態解析

 豊田氏は9年間の長期にわたり一貫して、光電子のスペクトル測定により化学状態の深さ方向分析を行う手法の開発とその放射光ビームインにおける検証・応用を中心に半導体薄膜、界面の研究を行ってきた。最大エントロピー(MEM)法を適用してスペクトル強度の脱出角依存性を解析する深さ方向分析手法に内在する諸問題を正確に理解して、独自のソフトウェア開発を行ってきた努力が高く評価できる。豊田氏はまたSPring-8の東大ビームラインBL07LSUにおけるナノ集光軟X線を利用した走査型顕微鏡であるnanoESCA開発の主要メンバーとして貢献してきた。豊田氏が開発してきた深さ方向分析手法は、このnanoESCAによる3次元化学状態分析のための最重要要素であり、Si-LSIをはじめ先端デバイスにおけるナノ多層薄膜材料の解析への応用が展開されていくものと期待される。以上、豊田氏はすでに重要な実績を上げ、さらに将来への広い展開が見込まれており、その功績は日本放射光学会奨励賞に十分値するものである。

日本放射光学会
会長 水木純一郎

2012年 1月

受賞研究報告 学会誌 vol.25 No.2(2012)