第20回 日本放射光学会奨励賞


片山 哲夫 会員 (KATAYAMA Tetsuo)

高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室

X線自由電子レーザーを利用したフェムト秒X線分光法の開発

  片山哲夫氏は超高輝度光源であるX線自由電子レーザー(XFEL)を用いたフェムト秒X線分光法の開発における諸問題を解決し、超高速放射光科学の発展に大きく貢献した。
   現行のXFELは自己増幅自発放射(SASE)と呼ばれる方式を採用しており、その超短パルス特性と幅広いスペクトル幅を活かした超高速放射光科学の開拓が期待される一方、SASE方式に特有の強度・スペクトルのランダムな揺らぎの存在によってその利用が制限されている。片山氏は、透過型回折格子とビームスプリッターを用いてこれらの揺らぎをダイナミカルに補正する手法を考案し、フェムト秒光学レーザーと組み合わせてシングルショットで10フェムト秒時間分解X線吸収分光を行う道を切り拓いた。この研究報告を契機に、XFELを用いた世界的な超高速分光の開発競争が始まっている。
  またアメリカ・スタンフォードのLCLSにおいても世界初のサブピコ秒時間分解軟X線発光分光測定を成功させる立役者となっており、その後のXFELを用いた表面分光研究の発展に寄与している。
  以上のように、将来の放射光サイエンスに大きな影響を与えた片山氏の業績は日本放射光学会奨励賞に十分に値するものであり、今後の光源開発に追随してさらなる成果を挙げることを期待するものである。

日本放射光学会
会長 石川哲也

2016年 1月

受賞研究報告 学会誌 Vol.29 No.2(2016)